安倍は辞めろ!!!!!

1月15日

 

 「安倍は死ね」という単語をよく目にする。見かけるのはもっぱらSNSなのだが、それだけに目を瞑ってみても、世間の安倍総理に対する風当たりは強いように感じる。今日、法律の講義で教授が猛烈に安倍総理を批判していた。この人はいつも安倍首相を非難しているし、その理屈や説明にも頷ける部分はあるのだが、俺にはどうしても安倍総理を嫌いになれないところがあった。

 アベノミクスがはじまったのは、ちょうど俺が受験勉強に明け暮れていた2013年の時だ。リーマンショックの痛々しいニュースで、世間の陰鬱な空気に辟易していた俺にとって、アベノミクスで上辺だけでも世間が受かれているような空気は、何だかようやく日本が上向きになったように感じられ、ひどく胸がときめいた。今までの首相に比べ、安倍総理は活動的ではないかと、頼もしくさえ思っていた。無論、政治に詳しくない小僧の戯言ではあるが、このアベノミクスの見かけだけの好景気は、俺が大学受験で志望校にひっかかった喜びに、上乗せされるようにますます俺の中で大きくなっていく。世間は好景気。俺の進路は上々。そして、この大学1年の頃に出会ったのがインターネットの世界である。当時、友達がおらず、どちらかというとインドア派だった俺は、SNSへの写真投稿を通じて、外に出る楽しさを覚え、また、そこで出会う今までに全く知り得なかった風俗嬢、メンヘラ、ドカタ、引きこもりなどの人間たちと触れ合うことにはとても新鮮だった。友達はいなかったが楽しかった。タイムラインに流れる「東京」の二文字が、「鹿児島」の三文字が、「徳島」の二文字が、俺を相対的に京都の大学生であることを自覚させてくれる。19歳という年齢、それだけで世界の主人公のような気分になった。大学という環境、インターネット、俺の大学入学は、前途多望なスタートを切っていたが、その裏で、世間では安倍総理の9条改正にはじまる、様々な暗雲が立ち込めているとは、何か出来過ぎたドラマのような気分にさえなっている。つまり、安倍総理は俺の青春の欠かせないバックグラウンドなのである。

 俺は安倍首相の写真を一枚だけ保存してある。アイスクリームにかぶりついている写真である。可愛いとインターネットでは評判だった。俺も可愛いと思う。安倍首相は、食べたい時は皆と同じように食べるのだ。安倍首相だってお腹が空くし、アイスクリームも食べたいのである。「安倍は死ね」「安倍はやめろ」。いつもいつも罵詈雑言をインターネットで浴びせられているとは、この一枚の写真からでは、全く想像出来ない。発言をすれば「死ね」と言われ、「辞めろ」と言われ、安倍は大丈夫なのだろうか。政治の知識も何もない俺は、つい、そんなバカげたような心配が浮かんでくる。今は大学4年生。次は大学院進学である。俺はメディアの道を志したいと思っている。当然、世情に疎かったので就活は失敗したが、きっと安倍が何故批判されているのか、何故辞めろと言われているのか、この大学院での勉強で理解していくに違いない。その時は俺も「安倍は死ね」と声高々に叫ぶのだろうか。「安倍はやめろ」とほくそ笑むような人間になるのだろうか。俺は安倍を嫌いになるかもしれない。けれど、アイスクリームの写真を見て安倍に抱いた感情は、きっと死ぬまで大切にしなければならない。俺はそう思った。