FF5のオメガというモンスター

 スーパーファミコンの名作RPGFF5にオメガというボスキャラクターがいる。ボスと言っても、物語に直接の関わりはない。次元の狭間というエリアに、普通のモンスターのようにウロウロしているのだが、これがやたらめったら、物語のラストボスであるエクスデスより強いのだ。


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 オメガは機械仕掛けのモンスターである。物語中の失われた文明に作られ、文明崩壊のきっかけとなったらしい。そのあまりの強さに、発明者である人間の手に負えなかったというところが、人類の業の象徴である気がしてならない。僕は、この何の緊張感もなくフィールドをウロウロしていて、何の予備知識を持たないプレイヤーに絶望を朝飯前のように与えていくこのオメガというキャラクターが何となく好きだった。もう一体、同じようなキャラクターでしんりゅうというモンスターもいるのだが、FF5の中で異様な存在感を放っているのはオメガのほうだろう。


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 もう一度言うが、僕はオメガというキャラクターが好きだ。主人公たちの物語など知らんぷりで、勝手気ままに生きているその姿に、幼少期から孤独になることの多かった僕はある種のシンパシーを感じたのだ。

 僕は中学、高校と、1人になることが沢山あった。もっとも、僕のコミュニケーション能力不足の原因によるところが多かった気がするのだが、昼休みの時間に周りの視線を気にして、大して仲良くもないクラスメイトと机を合わせる連中に、反発する気持ちがあったのも事実だ。僕は学生時代の途中から、思い描いていた青春像を放棄し、進んで1人で食べるようになった。しかし、悲しいかな。閉鎖的な空間で孤独を選ぶということは、やはりそれなりの制裁も覚悟しておかなければならない。僕は周囲からイロモノの目で見られ、それはとても苦しかった。それでも1人で居続けたのは僕がプライドの高い頑固者だったからである。


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 僕がオメガだったらどうなるだろうか。指差す奴らをアトミックレイで沈めて、くだらないクラスメイトをはどうほうで一掃するだろうか。僕はオメガの孤高さに憧れた。孤独を孤高に高めるのは絶対的な力だろう。クラスメイトの輪の中に入れなくても、オメガだったらそんなことはお構い無しだろう。オメガは教室の隅で静かに1人、すました顔で本でも読んでいるに違いない。

 今、僕は大学4回生だ。とてもオメガなどと言っていられる年齢ではないが、オメガの生き方は僕の胸に深く刻まれている。恋人なんていらないし、友達なんていらない。機械仕掛けの無口な身体で良いから、僕はオメガになりたかった。